こつこつと
HAL

ほんとうに良い仕事をする人間はいるんだ。
いつの世にもどこかにそういう人間がいて、
見えないところで、世の中の楔(くさび)になっている。
            (山本周五郎 柳橋物語より)




いる
いるよ

世間の片隅で
世界の何処かで

こつこつと昨日より
代えてはならないことを
知りながら日々学ぶことを

日々自分を磨きながら
佳いものを創ろうと
しているひとたちは

いる
いるよ
ほんとうにいるよ

世間に知られなくても
世界の光を浴びなくても

そんなことに興味も持たず
ずっと古くから引き継いだ大切なものを
つぎの世代へとただ引き渡すためにだけ

毎日毎日こつこつと
称賛の言葉など必要ないと
勲章など欲しいと想ったこともなく

だれにも必要なものを
だれもが望むものを創ろうと
ただただこつこつと腕を磨いているひとたち

そんなひとたちが世界の血管となって
この世界に栄養を与えつづけていることすら想わず
そしていつも驕ることもなく

そんなひとたちのために
職人という言葉があることも知らずに
やはり今日もまたこつこつと


自由詩 こつこつと Copyright HAL 2013-05-20 15:20:07
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