禿頭
……とある蛙

沼のほとりで
朝日を何回か浴びているうちに
僕は気づいた。物語に参加していることに。
それから僕は
少し考えながら山道を登るようになる。

目の前にある栗林は
妙な匂いのする林で
樹木の間隔は…でばらばら
ガサゴソ小動物の動き回る音がし、
それを狙う猛禽類が頭上を舞う。

猛禽類は長元坊
小さな猛禽類
頭上からの威圧感を感じて
僕は闇雲に走る

山道はくねくねしているが
何も変化無く続いている。
行き先は頂上かも知れないが、
折から漂う霧のため
見通しは良くない

無意味な登坂

しばらく走ってゆくうちに
ふと気づく
これは僕のための物語とは違うではないか


この物語の主人公ではない
そのことに気づいた僕は
山道を足早に引き返し、
麓まで辿り着こうとした
せかせかとして汗ッ掻きの僕は
すぐにかの猛禽類に狙われ
頭の天辺を突かれ始めた。

頭に手をやると
大して苦労した覚えがないが
天辺から禿頭になっていた
初夏の太陽が
新緑の葉を透かして
降り注ぐ。

知らない間に老け込んだ僕は
足早に山を下りようとしている。
物語の主人公だと勘違いしたことを後悔しながら
足早に辿り着こうとしている
その昔、朝日を眺めた高さの処まで。

夕陽を浴びながら
ふと自分の姿を沼の水たまりで見ると
それは禿頭のフクロ鼠だった。


自由詩 禿頭 Copyright ……とある蛙 2013-05-20 10:41:03
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