灯し火
Neutral

人の心を物に例えるとしたら
ランプだろう

例えば
やる気ってのはランプの火みたいなものさ
燃え上がるそのさまは美しく
見る者にも強さを与える

だが頑張れば頑張るほど
頭も体も熱くなりうまく働かない
火が強くなりすぎるとそうなる

何かを閃いた時
普通の人は
頭の上で電球に明かりを灯す
一方知識に貪欲な彼らは
ランプに火を灯した

なぜなら
一瞬で明かりがつくほど簡単じゃなく
一瞬で消えるほどその知識は軽くないからさ
しかし燃やし続けると
ススがたまり
なかなか次の火が灯らなくなるのだ
誰が最初だったんだろう
スランプ
だなんて洒落た呼び方をしたのは

人の心を物に例えるとしたら
ランプだろう
手間がかかるし汚れが匂いが
そうやってランプを投げ捨て
人は便利なものを便利なものをと求める

だが僕達は知ってるはずだ
やってみなくちゃわからないと
誰かが必死に握りしめていた木の棒が生んだあの美しい火を
それを生み出せるのは人の心だけだ

火を消す事はあっても
投げ捨てたりはしない
毎日僕はランプを持ち歩き
すれ違う人々の冷えた心を火にくべていく

ランプの火は
やる気だ
知識欲だ
手間がかかる事の大切さを知っている心の記憶だ
ランプはすっかり綺麗になって
僕の一日は締めくくられる

今日やらない事は明日もやらない
しかし
今日出来なかった事は
明日は出来るかもしれないという事だ
どうか明日も
この道を照らしておくれ


自由詩 灯し火 Copyright Neutral 2013-05-18 22:16:20
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