ヴィーナス
草野春心
伸びすぎた爪を切った
雨が吹いて桜の花びらは散った
たくさんの緑たちを巻きつけて春が夏に変わる
男の子がカナシミを知ってくみたく
女の子がタイクツを知ってくみたく
煙草すいながらきみのこと想ってた
何度きみのこと抱きしめたかしんないけどきっと
僕のふれていない髪の毛がきみの頭にはあって
それが僕をたまらなくムズ痒くさせるんだ
あのときのまま残ってるもの、なにひとつない
春の終わり
シャワーの最後の一滴しゅるしゅると吸い込まれ
やるせない鼻歌も壁にはじけて消える
レッツ・ワルツ・ヴィーナス
汽笛が鳴りおえたらひとつ歳をとろうぜ