ヴィーナス
草野春心



  伸びすぎた爪を切った
  雨が吹いて桜の花びらは散った
  たくさんの緑たちを巻きつけて春が夏に変わる
  男の子がカナシミを知ってくみたく
  女の子がタイクツを知ってくみたく



  煙草すいながらきみのこと想ってた
  何度きみのこと抱きしめたかしんないけどきっと
  僕のふれていない髪の毛がきみの頭にはあって
  それが僕をたまらなくムズ痒くさせるんだ
  あのときのまま残ってるもの、なにひとつない



  春の終わり
  シャワーの最後の一滴しゅるしゅると吸い込まれ
  やるせない鼻歌も壁にはじけて消える
  レッツ・ワルツ・ヴィーナス
  汽笛が鳴りおえたらひとつ歳をとろうぜ





自由詩 ヴィーナス Copyright 草野春心 2013-05-16 23:25:18
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