美味しいね
るるりら

三輪車を 逆さにして
サドルを ペタンと地面に つけて
ペダルを おててでくるくるまわしながら
もうひとつの おててで 車輪に砂をかけて
しばらく くるくるまわして 突然叫ぶ
「どーーーーーーーーーーーん」
そして目を 閉じて
くんくんくんと 匂いを嗅ぐ顔をして しみじみ言う
「いいにおい」


ボン菓子売りのおじさんが
公園にやってくると
ビニールにお米一合と砂糖をしっかり持って
おじさんに渡す

おじさんは なんだか
あやしい大砲の筒のようなものの横についているハンドルを回して
「みんな さがってぇ 耳をふさいで!」と 叫ぶやいなや
「どーん」という音とともに あまいあまい においがして
目を閉じると 周囲は 匂い砂糖の焼けた匂いが
公園のはるかむこうので 風にのって ながれていった
くんくんくん 焼ける匂いの ポン菓子を

袋に おじさんが 一合分のポン菓子だけ小分けにしてくれて
ポン菓子は ほんのり熱を のこしていて
おもわず 頬づり。

それからというもの 
三輪車で再現してみた。三輪車を逆さにして
ペダルをくるくるまわして 車輪に お米と砂糖のかわりの砂をかけて

くるくるくるくる「もう そろそろ いいころだな」 「どーん」
「...いいにおい...」
何時間でも そうしていた
何日も そうしていた
 


自由詩 美味しいね Copyright るるりら 2013-05-16 09:16:41
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