牛舎
草野春心



  五月、
  牛舎はくたびれて
  立っているのもやっとのようだ
  風のにおいはつんと饐え、
  鍬があちこちで土に埋まっている



  午後になり、積まれた干し草を
  歯車みたいに食む牛たちも
  時がくれば
  あるものは売られるだろう
  あるものは殺されるだろう
  あるものは死ぬだろう、時がくれば
  


  わたしたちは
  軽自動車を路肩にとめて
  金色の山並みを飽きもせずながめていた
  きみの長い髪がわたしの胸を刺し
  そのたびわたしの血液は鋭い痛みへと変わった
  抱き合おう
  落ちかかる夕暮れの光が
  乾いて、ひび割れてしまう前に
  睦み合おう
  一刻もはやく




自由詩 牛舎 Copyright 草野春心 2013-05-15 23:21:19
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