済州島の霧雨に濡れて馬は
平瀬たかのり

 種付けのために
 つれてこられた済州島で
 その馬は
 霧雨に濡れてさみしげに
 たたずんでいたという

 皐月賞と日本ダービーを
 勝っていた
 でも隣の国に贈られた
 走る仔を遺せなかったから

 日本語は
 耳慣れていたか
 ハングルは
 どんなふうに聞こえたか

 海を渡り
 季節がひとめぐりもしないうちに
 死んでしまった二冠馬に
 思いをはせる
 それから一度
 祖国、と
 つぶやいてみる

   〈カツトップエース〉


自由詩 済州島の霧雨に濡れて馬は Copyright 平瀬たかのり 2013-05-15 20:22:25
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