ペーパーハウス
村正

紙の世界でコーヒーを淹れたい

記憶の断片がいまさら燃え上がる

繊維質の砂漠の中

雨で崩れる家

家具はライターで焼けてしまう

崩れても逃げ遅れない

折り紙ですべては元通り

心配しないで

バースデイケーキだってきっと

紙の家に住みたい

すべてが薄っぺらい

厚いものは見えないだけ

服もおもちゃもテレビもいらない

偽物じゃない望み

紙の毛を切りに出かけたら

紙の車にひかれかけて

体に折り目が付く

心配は要らなかった

あの家がまぶしくて

紙をつぎ足してはいけないと思った

だから紙飛行機を体につけた

会いに行くため

書けないのはこれからの事

修正出来ずによくわかる

紙の家に住みたい

叶うのを待っている

文字を体に書き込む度に

酸化が終わるまでの旅がつづく

擦り切れる前に飛ぶだけ

行かないで

大事なものは書き留めるから

どうか

バースデーケーキに火を

いつかは谷折りの世界






戻れないのはわかっていた






同じ素材でできた人は

きっと手紙もよこさない

真空の中にあるという

あの家に向かっていく

ゆっくりと

かみの家に向かっていく


自由詩 ペーパーハウス Copyright 村正 2013-05-13 19:41:55
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