大森林
嘉村奈緒
土くれの上で
ブクブクと肺をうごかして
息を吸う
息を吐く
それから
しらじらとした空気の中で小さくワルツをする
手はこう、角度はこう、小さく、チラチラと、
( 風が吹くときは少しだけ飛ぶ(( 葉もいっせいに散る
つかれたら胞子をたくさん食うよ
光もさがしにいくよ
滑らかなつま先でいきおいよく緑の中
を
「 あれは薄いね 「 薄いよ 「 けれど緑だね 「 育つんだね
とか、笑いながら落ち葉をけちらして華やかに
(( けれど木肌は湿らせて
縦裂した幹に気を配ることも忘れずに
(( 着地音がスタンディング・オベーションで!
で、てっぺんから落ちてくる重圧で
今にも、死んでしまいそう、だよ、死んで
しまいそうだよ!
とか
つま先は
土だらけなほど
いいの
ヒョウ、ヒョウ、とこめかみに伝わる 烏鷺が実直にふるえているよ
ぼくらも真似をしてヒョウ、ヒョウ、と華やかに土を蹴る、
肺が膨らむよ、太陽で育つんだよ、土臭さも、そういえば
「「 静かだね
(( …
ぼくらは
いつかの生き物のために
穴があいてしまえばいい
(( …た、
( くるった、ような
狂ったような、
緑で窒息するまで、ワルツして、ターンして、つま先を滑らかに、(( …ヒョウ、ヒョウ、とかね、
腐蝕して、空っ風に何度かふかれて、奔放に散っていく、剥離した樹皮たちと、
くるりとまわる輪の中で、一日が擦れていく音を聞きながら、ぼくらもくるり、くるりとまわる、
光と陰と緑と、ひかりとかげと、緑と、緑の、中心で、息を吸う、息を吐く、
来る日も、また来る日も、肺をうごかして、静かだね、そうだね、薄いね、死んでるね、静かだね、溺れるよ、
溺れるよ、
溺れるよ、
溺れるよ
(( …肺の中で、艶やかな葉を茂らせて
(( ……踊って、…の、中で、狂った みどり、の、
(( … …