最近読んだ本
ふるる

図書館やツタヤで借りて読んだ本です。ネタバレあります。

『RDG レッドデータガール 1〜6』荻原規子 著
アニメ化されているので読んでみました。面白かったけど、色々少女マンガぽかった。今どき珍しいもっさり引きこもり気味の主人公で、共感は呼びづらいような。そういう意味での絶滅危惧種?山伏、忍者、陰陽師、神霊、いろいろ出てきます。


『虐殺器官』伊藤 計劃 著
なんかすごい奇妙な小説を読んだなーという気分。まったいらな氷の上をつるーっと滑ってゴール。というような。
物語にも、主人公にも、アップダウンがあるんだけど、全然実感こもらない。のっぺりしてる。
登場人物は、作者の操り人形ですらない感じ。ただつるーっと。
暗殺者は感情を抑制されるという設定だから?大量虐殺シーンとか、お母さんの話とか、同じ話が何度も出てくる。
夢も希望もないお話。
SF的な機械や装置が色々あって、それは結構面白いです。説明が多いけど。
これが新しい世代のニーズにあった小説なんでしょうか。こういうのをゲーム小説っぽいと言うのかな?


『箱舟さくら丸』安部公房 著
読んで損はしない安部公房。しょっぱなから、足がなく、自らの糞を回りながら食べるので時計代わりになる架空の虫「時計虫」が出てきて面白い。核シェルター代わりの採石場跡に集まる男女。すごい吸い込み力のあるトイレに誤って片足をつっこんで抜けなくなる主人公(笑)。厳選して人を入れるはずのシェルターには、中学生だの老人集団だのが入り込んで・・・という話。
登場人物がしょっっっっちゅうトイレに行きます。そういう小説って読んだことないから面白かった。
核シェルターを作ったとして、トイレは切実な問題ですよね。


『名作うしろ読み』斎藤美奈子 著
文字通り、名作の最後の一文をひいて、本の内容を面白おかしく解説していくというもの。
不思議なんだけど、最後の一文だけを読み続けていると鳥肌が立ってくる。「ああ読み終わった」という開放感みたいなのが続くからだと思う。


『人間仮免中』卯月 妙子 著
漫画大賞にノミネートされた漫画。長く精神を病み、ついには歩道橋から飛び降りる作者。歩道橋から落ちて顔面激突しても生きている不思議。作者が強運なのか顔が丈夫なのか・・・。
どんな状態になっても、妻に優しい夫。優しすぎて、この夫婦のつながりを「愛」の一言ですませたらもったいないくらい。
好きなのは、「知り合いの保証人になって貯金を失った」という夫に、作者が「問題ない。貧乏には慣れている」と即答するところ。
あと、作者の見る幻覚のリアルさがものすごく、人間の脳って怖いなーとつくづく思いました。


『悪の華1〜7』押見修造 著
アニメ化されている漫画。このアニメ、終わりの曲の「ハナガサイタヨー」が頭から離れません。中学生同士が変態道へ突っ走る。とは言え中学生なので、そこそこ。この作者の描く少女が、しみじみ見るほど美しい時がある。好きって気持ちは規則や法を簡単に破らせるんだな・・・。
文学好きの若者ってみんな、読まない人ががアホに見えるのかな。私もかつて、そんな病をわずらっていたので懐かしかった。


『舟を編む』三浦しをん 著
辞書を作る苦労話に恋愛話が絡めてある。女性誌の連載だったからしょうがないけど、あんな都合のいい恋愛話はあってもなくてもいいと思う。辞書の苦労話もっと。と思いました。
辞書を作るのに、紙を新しく作ることもあるというのには驚きました。その紙は、薄くてめくりやすくて裏うつりしなくてページどうしがくっつかなくてぬめり感があって・・・と厳しい条件がある。作中の辞書の装丁と、『舟を編む』の装丁が同じなところが憎い演出。


『カッシアの物語 1〜2』アリー・コンディ 著 高橋 啓 訳
文字を手で書いたり、文学を読むのを禁じられた近未来。自由まるでなし。食事を分け合ってもいけないし、デートは監視員つき。結婚相手から職業から死ぬ時期まで管理されている社会。カッシアという17歳の少女の周りでほころびが出始め、カッシアも現状に疑問を抱き、逃げ出すというお話。ブラッドベリ『華氏451度』の焼き直しみたいな。あそこまで被支配者がバカってわけじゃなく、みんな普通にかしこくて意志もあるんだけど。記憶を消されたりするから同じことかな。
住民は赤、青、緑の錠剤を渡されていていつも持っていないといけない。本の色もそれにならっている。
昔のアメリカ詩が多く登場する。詩は100編しか残されていないので、違法に残されている詩はすごく貴重品。
カッシアは祖父から二編の詩をこっそり渡される。「その昔、書き込み装置はあったのか?手で書いたのか?その詩人は自分がどれだけ幸運か、知っていただろうか。こんなに美しい言葉を持っていて、それを見せ、保存する場所を持っていることが、どんなに恵まれているかを。」という文章があり、今って幸せだなーとしみじみ思いました。その社会の、管理のきびしさが半端ないから。紙を捨てたかどうかも、重さでばれちゃう。うっかり内緒の手紙も渡せない。服装も決まっているし、遅刻もダメ、過去の人工遺物は1つだけ持っていていいことになっていたけど、それも取り上げられる。まさにディストピア。色々あって、カッシアは反乱軍に入るけど、スパイとしてもとの場所に戻されちゃう。3が今年の秋に出るそうだけど、どうなるんだろう。
それにしても、カッシアが二股するのがなーなんかやだなー。ちょっと前に読んだアメリカのティーン向け小説『メディエーター』も『トワイライト』も主人公の女の子が二股するんだけど(どっちもイケメンで、二股されてるって分かってても主人公に優しい)それが現代っ子なの?


散文(批評随筆小説等) 最近読んだ本 Copyright ふるる 2013-05-08 21:26:44
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