ちょっきん
佑木

ちょき ちょき ちょっきん

ハサミはただ一生懸命 紙を切っていた
紙を切ることが 目的なのだ

ハサミは紙を切りやすい形につくられていた
紙を切ってさえいれば ご主人は大切にしてくれた
磨いてもくれたし 油をさしてもらうと体も軽くなった
使命をはたすことは 幸福になることとわかった

ただ紙を切れ    ただ紙を切りさえすれば

ある日 ハサミは思う

ご主人は自分の使命をはたしているのだろうか
ご主人たちは創造主に似た形につくられているのでは
ないのだろうか

行き詰まった現代ハサミニズム
ハサミはただ一生懸命 紙を切れなくなった

ちょき ちょき ちょっきん

ただ紙を切れ    ただ紙を切りさえすれば

ハサミはただ一生懸命 紙を切れなくなった

ちょき ちょき ちょっきん

ただ紙を切れ    ただ紙を切りさえすれば


自由詩 ちょっきん Copyright 佑木 2013-05-07 23:27:16
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