ピア
平井容子


1.虹

紐といた

気の遠くなるひだまりの路線で
彼のもつれた襟足に
昼の星は木漏れて消えた



2.スターバックスラテの矛盾

おびただしい反則が
やがてあらしを連れて丘を巻く
(なつかしさよ)
目の落ちた通りで∴が倒立する
わたしは本を畳んで屋上から跳んだ



3.交感式

ぺとぺとになった春がおおいかぶさった
肌のしたでぐっと舌を丸めて待つ
木の芽が老いて腐っていく
くさいかな、と言って笑ってさしだした

いくつものことづけ



4.終止符(夜明)

どの詩にも同じフレーズを忍ばせた
あそぶかろやかなかなしみ
いてほしいものがなかったとは思わない
ひかる無数の菜の花
絶えず呼吸していた
でももう死んでしまった場所に
とりあえずでたらめな歌を添えて

止血 わたしがわたしたちへ至るために




自由詩 ピア Copyright 平井容子 2013-05-07 17:31:38
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