潮音、遥か
佐東



夏のはじまりの声に
奪われた鼓膜は
透明の
セロファンに覆われた
巻貝の中で浮遊する



白い花びらの波に
さらわれた遠い渚で
掠めとられたくるぶし は
薄暑の縁どりで切りとられた
ひんやりとした青に
浸蝕される



骨密度の低下した
テトラポットの足跡を
途切れ途切れの
海鳥の
灰色の羽毛が
追っている



水に浮く
白い花びらは
青く透けて
海の名前を
忘れてしまった




自由詩 潮音、遥か Copyright 佐東 2013-05-06 21:27:47
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