Loto
月乃助



山色も褪せる
賽の河原とよぶ 山の端に
鬼がいっぴき 住んでおった

大酒喰らいの 赤鬼

人に化けては 濁酒を飲みにくる
細かなことには、気が向かぬのか
角を 忘れていたりするものだから
わしは、どっこい
それと 見てとれる

うぬは、いったい いくつだ
そう問えば
はて さて
人の心の憎しみや 怒りにやどるという
それならば、人の歩みほどの
歳らしい

戦さや 争いのない 
平らかな時代には、
何もすることがないと 
祠のある暗穴に おお鼾で
幾年も寝ていたりする

そんなとき 人のすがたで、
里にでて 夢がみられるようにと
富札をかう という

あたるのかと
鬼のさしだす ぼろぼろの
いつの世かの 札をみれば

さてさて
金のためではないと
まんざら嘘ではなさそうな
話をきかせる

どこで手にいれたのか
もってきた高価な漆の椀に 酒をみたせば
あおるような飲みほしよう

鬼とわしが酌み交わす
ふたり酒

肴は、旬の遠雷と 晩春の
小雨でござる








自由詩 Loto Copyright 月乃助 2013-05-06 19:23:58
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