海の五月
佐東

 

緑の斜面で
息つぎしながら
遠くはなれて 青いしんこきゅう
くりかえすたび
さざ波
うまれては きえてゆく



五月の水際に よりそう
ゆるやかな
春の終わりを編みこんだ
つぎはぎの花房は
手のひらに あふれ出す
水平線につつまれて
夏の
おどる夢を みている



魚のかたちをした雲が
よこぎってゆく
雨あがりの まぶしいみちの上で
白いまき貝を 耳にあてて
名まえのない
波のうたをきいている



鼓膜は
波の底に置いてきたから

ちゃぷちゃっぷんの話を
してあげる

わたし
ひき潮のあいだに
髪を梳かなければ
ならないの
 
 
 





自由詩 海の五月 Copyright 佐東 2013-05-03 07:51:56
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