花の傘 雨道に
砂木

黄色の帽子をかぶった一年生が
朝の登校の集団に 交じっている

今時はピンクのランドセルもあり
小さな背中一杯に背負い込んでいて
初々しさに 車を運転しながら
自然と微笑み 見ようとしたが
ぎょっ とした

女の子が 口を一文字に歯をくいしばり
自分のつま先ほどの地面を
キッと 睨みつけ
ただならぬ気迫を漂わせて 歩いている

上級生の子が迎えにきてくれるけど
登校が始まる前に 歩く練習をさせようと思うの
道も覚えて貰いたいし
そう言って 入学前の仕事が休みの日に
登校の練習をする親子が いるのも知ってはいたが
親と離れて登校するのは 必死の気合がいるのだろう

幼稚園は送迎があり 大勢のお兄さんお姉さんと
道を歩いて学校に行くのは 初めてか

数人の黄色帽の男の子が 黄色の傘で
ちゃんばらをしている
まだ 待ち合わせている子達は 歩道でふざけ
近くの上級生のお兄さんにも 
えいっと 傘を振り下ろす
お兄さんは ひょいっとよける
大きな口を開けて 笑ってる

かと思うと 泣きべそみたいな表情で
ひたすら 歩いている子もいる
のっぽのお兄さんの横に 
ぴたっと寄り添いながら 歩く子も

いけない 私が事故る つい見てしまう
新一年生より最低な ドライバーになってしまう
出勤する私には  晴ればれとはいかない
いろんな気持ちがあるけれど

黄色帽の一年生に 負けられない
ピンクのランドセルの子の気迫に励まされて

歩いてきたんだ 生まれてから今まで
歩いていけるように 歩かせて貰って

いつもいつも 背中には背負いきれない私だけど
えいっ
雨の日は 傘をかざして






 



自由詩 花の傘 雨道に Copyright 砂木 2013-05-02 21:10:44
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