山女の木琴
灰泥軽茶

山奥の沢
大きな石の上に寝転がっていると

こんぽろりん
こんぽろりん

遠くの方から小さな
木琴の音色が聴こえてくる
私は少し調子の外れた
しかし心地の良いその音に導かれるように
いくつもの沢を登っていくと

小さな祠の前で
山女色の服を着た女性が
木琴のバチを持ち楽しそうに
大小様々な石を叩いていた

こんぽろりん
こんぽろりん

石は叩かれるとよく響き
同時に透明色に輝き
ゼリーのように揺れている

女性は私に気づくと
楽しそうに笑い手招きをするので
私も嬉しくなって近づいていくと

えいええいと
肩甲骨を連打すると

こんぽろりん
こんぽろりん

と身体中に響きわたり
光りの明滅
緑たちは渦を巻き
目の前が透明色に輝き
ゼリーのように揺れて縮んでいく
女性は楽しそうに笑いながら
ひょいと山女になった私を掴んで
川の中に投げ込んだ

冷たくて暖かい気持ちがする
川底の中をそよいで
身体をくねらす



自由詩 山女の木琴 Copyright 灰泥軽茶 2013-04-29 22:41:03
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