未開
ロクエヒロアキ

陸にのぼったばかりのときには生えていた角を
すっかりかくしてしまったわたしは
無明のランプのともる道を
あやしげな気流に揉まれながら
こぼれたワインをぴちゃぴちゃと踏みしめつつ
そう、気がつけばどこかで靴を脱いではだしで、
硬いテーブルクロスのすみっこをめざす新米給仕のように
横切る猿は頭から丸のみ
翼はないけれどもはばたくのはとっても上手
おしりに残っていた綿毛をふるふると振るい落とし
ひっつかまえていないと空はかんたんに落ちてきてしまうから
さあ、いそげ
舌が満潮を迎えるまえに
膝と膝をこすりあわせるようにしながら
用意されたゴールテープを周到に躱して肩すかし
そこから先は、しだいに雑になってゆく風景の造型のなかを、
これは進んでいるのではなく戻っているのかしらと思いつつ、わくわくしつつ!
まっすぐだけれど迷宮である道を
うずもれながら、
すすむ。


自由詩 未開 Copyright ロクエヒロアキ 2013-04-26 01:02:42
notebook Home 戻る