アシカセ
nonya
相変わらず僕は
たいていの場所へ
行けてしまう
羽ばたかない翼にしがみついて
南の島に不時着することだって
くねらない蛇に飲み込まれたまま
海峡の下に潜り込むことだって
軽過ぎるアシカセは
薄ら笑いのような音をたてて
何処までもついてくる
媚がこびりついた仕草で
毒の水を注いでもらっている時にだって
格安ドラマの主人公を気取って
一行の台詞をこねくり回している時にだって
自由と呼んでしまえば
どこまでも自由になりそうな
甘ったるいアシカセに頬ずりしながら
僕はうっとりと囚人の悲哀を語る
その気になれば
アシカセを改造して
翼のレプリカだって作れそうな
気がする
その気になれば
アシカセでリズムをとって
とびっきりの流行歌だって歌えそうな
気がするけれど
どうして目の前の
液晶ディスプレイの小窓に広がる
いとおしい痛みの色をたたえた
君の言葉の空を飛べないのだろう