ひとつ 幕間
木立 悟





径を照らす茶色の花
川のかたちを隠す樹の影
砂岩の崖のはざまを下り
陽は淡く細く鳴りひびく


光はまぼろし
こがねは緑
巨大な片羽
星の同義語


午後の陰を
引いてゆく波
冬は残る
交差に従う


水と光の坂が立ち
流れる空を映している
音は舟
入り江をめぐる


白と黒の壁
降りない猫
木の車輪が
森の入口で鉱になる


はらわたを照らし
崖の陽はすぎる
ささやきと結晶
生まれるうたの手を造る


空を刻む遅い色
原を止める陽
寄せる火の波
空のかけらが 
短い鉛の矢に降りそそぐ


午後の径 炭の径
何もない荒地から
柵が砕けながら起き上がり
霧と土を分けてゆく


吼えるたびにこがね
吼えるたびに緑
風を風に彫るように
硝子はふるえ 立ちつくす


黒い森から街へ下り
午後の高さ
午後の遠さ
どこまでも近い冬を知る


雪の上の足跡へ
曇と光が流れ込む
ふたつの紅 ふたつの砂
とめどない無音


まばたきより速く
希望はすぎる
割れ 歪み 戻る鏡
蒼く広い幕間を映す




























自由詩 ひとつ 幕間 Copyright 木立 悟 2013-04-24 10:48:25
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