SF
うみこ

さっきまで声をはっていた
街角のサンプリングアルバイトの女は
帰りの電車で蝋人形のように固まっている

何かに疲れて
心が怯えている
簡単で
単純で
気兼ねのない言葉で
明日の予定をつくりあげたい
今すぐ大切な人へ
複雑で素直な気持ちを届けたい

でもすれ違ったまま
簡単に
単純に
何もかも途切れた

吊革につかまって
沈みそうな心を支えている
目を閉じて
あれこれ思い出している

後悔は波のように押し寄せる
窓の外に流星のように街明かりが流れる
まるでSFのような不明確なストーリーの伏線が足元にのびている

いつもこの物語は最寄り駅で終わってしまう

君がどう思ったか
僕はどうすれば良かったのか
何をどこで間違ったのか
明日の朝には全て消えてしまう

時間のない僕はその先へ行けない

向かいに座っていた女が
あのあと泣いたのか
心を溶かす恋人に会えたのか
無表情のままホームに降りたのか
いつまでも知ることはない


自由詩 SF Copyright うみこ 2013-04-22 21:56:09
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