初恋
佐東

一.

雨あがりの きみの靴は
つま先が いつも
虹のうまれる方角を ながめている



二.

黄のバイエルを
途中でなげだしてしまった
きみの
メゾピアノで吐く息が
スタッカートで かけあがる
空の向こうがわ

真白い 自由な雲が
湧きあがる



三.

淡い
まえ髪の息づかいで
低空飛行の紙ひこうきが
つぃーー
と横ぎってゆく

あおい傷みの 空を
きりさいて



四.

コップに注いだ
微炭酸の ちいさな泡が
きえてゆく 港

午後の帆船は
つながれて
出航できないまま



五.

壁にかけてある林檎の静物画が
日増しに熟れてゆく
その過程

やわらかに みつめている
仔猫のような
無垢な ひたいで



六.

音のない雨が
砂にしみ込んで
黒く滲んでゆく
よるの渚 のような
きみの瞳が すきでした











自由詩 初恋 Copyright 佐東 2013-04-21 10:47:37
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