木屋 亞万

漠然とした砂の続く大地
平らな線が限りなく遠くに
つなぎ合わせればおそらく丸い

砂の山の起伏もさらなる飛翔の末
なめらかな肌になるのかもしれない
女の柔い背中の上を飛んでいる

細胞の一つひとつの核がぼこぼこと出張る
何一つ立ち上がるものはない見渡す限りに砂
なめれば甘そうな白は滑らかで

骨の粉末を血で浸したものを吹き荒らす風
むべむべと山風が故郷を失い錯乱すれば
ひりひりとした緊張のなか空気がかわいていく

あたらしい日を浴びて白けていく愛
砂嵐に埋もれてしまったテレビスターには
灰色のノイズ以外なにも残らない

風に戦いを挑んだ飛行気乗りは
無防備に空を泳いで順風満帆さえ命とり
無邪気な風にへし折られた骨を数える

風には何語も通じない
いかなる刃も弾丸も役に立たない
どれだけ石を積み上げたところで立て板に水

背中のくぼみの真ん中で煙をあげて壊れる機体
折れた骨の残骸に埋もれて
澄んだ夜空にまでこびりついた砂粒を見る

吹き止まない風と戦って得るものは何なのか
思考の跡すらさらさらと砂に消されて
ちいさな粒子のつぶに埋もれる

もうこれで私は砂のように微小な
そして砂漠のように漠然とした存在
吹き止まない風となって世界をぐるぐる回り続ける


自由詩Copyright 木屋 亞万 2013-04-20 19:06:03
notebook Home 戻る