僕が飲んでいるもの
nonya


僕達の薄ら甘い関係は
砂糖というよりぶどう糖だった

君の囀りにも似た言葉は
体液のように僕の身体を巡り

君の微笑みの陽だまりは
L-アルギニンのように
僕の生活に治癒力と免疫力を与え

君のカフェインをまとった仕草は
くる日もくる日も僕を高揚させ
いたる所で僕を覚醒させた

なんとも心地良い関係を
終わらせたくなかった僕は

イノシトールの努力で
思考の脂身を溶かし

ナイアシンの覚悟で
心のアルコール臭を拭い去った

しかし無理な爪先立ちは
いつまでも続かなかった

終わりは突然やってきた

有頂天で隙だらけだった僕は
悪玉の巧みな言葉に乗せられて
君が大切にしていたパントテン酸を
あっさり売り払ってしまったのだ

善玉を見出せなくなって
際限なく肥大していく
とてもコレステロールな僕に
君はカルシウムの厳格さで背を向けた

背骨すら無くしてしまった僕は
重力にひれ伏すように深く落ち込み
ヴィタミンのエレベーターは下がり続けた

B2
B6
B12の
長方形の暗闇に置き去りにされた僕は
もはや
どんな香料をふりかけようと
どんな着色料をぬりたくろうと
僕には戻れなくなっていた

薄ら苦いカラメルのような暗闇で
正体をすっかり無くした僕が
すすり泣くように飲んでいるものは
いったい何だと思う?




自由詩 僕が飲んでいるもの Copyright nonya 2013-04-20 13:10:25
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