単独行
ぎへいじ
太陽が戻った
もう ここに居るのは疲れたよと東へ流れ去って行く雨雲を見送れば
残していった渇いたため息が 風に変わる
うまく やり過ごした
のびのび体を開いて歩き出す
急げ
目指す地は 遥か遠い
雲の帯には前線と言う名字があるのだが あの雲の頭につく名前は知らない
息を切らして ひとつ越えると細く弱々しい雲の帯
目の前の山を呑み込み霞んで行く
先行して来た風が 私を見つけて耳元で 優しくささやいた
今日は無性に人の熱が食いたくてしょうがなかったよ
二次前線
罠に かかった
あの空は誘き出しの餌だったか
弱らせて その爪をゆるめ再び捕まえては うちつける
獲物を もて遊ぶ雨の歓喜の声
生きる喜びを味あわせた後に 生死をかけた闘いの唄を歌わせる
自然は そう言う事をする
ただ あの時
俺は運が良かった
小彼岸桜
今年初めての虹の向こうに残雪を抱いて横たわる稜線
今も聞こえて来る
こんな所で
言えば言うほど 心が折れて行った震える声が