真昼の霧、あるいは老いた詩人たち
佐々宝砂

霧は晴れた 夜は明けた そして戦争は終わった
だからこそカーニヴァルがひらかれ
娘たちと青年たちはみな
陽気な音楽のリズムに身体を預け踊り狂ったのだ

レイヴンよ おまえは覚えているか
戦いは時に美しくさえあったと
(そうだ我等はそんなことを繰り返し繰り返し書いたのだ)
レイヴンよ おまえはお喋りだったな
がらがらしたおまえの声は夜にこそ似合いだった

我等の背嚢をひっくり返してみたところで
そこにはもう夜の欠片さえないだろう
レイヴンよ おまえがすべての夜を呑んだのだから
だからこそ我等はおまえを追放したのだった

輝かしい真昼この地上を霧が覆う
この真昼の霧はあまりにも息苦しい
それはおまえ流儀の復讐なのだと我等は考えたが
どうやらそうではなかったらしい

野蛮なるレイヴンよ 腐肉を貪るものよ
おまえに頭を下げたくはないのだが
戻れ レイヴンよ 我等により追放されたものよ
戻れ 戻って真昼の霧を啄み我等を助けてくれ




自由詩 真昼の霧、あるいは老いた詩人たち Copyright 佐々宝砂 2004-12-28 05:29:09
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