原と影
木立 悟





室内の外灯が
ねじれながら消えてゆく
蒼と銀の昼
置き去りの冬


つながりのない空が手をつなぎ
脚で波を数えている
枝の標から
生まれる音


冬を曲がると
見えてくる原
刺さったままの
雨のかけら


鳥の終わりとはじまりと
こがねをまたぐ酸の庭
白くにおい
白くにおう


冬の鎖に書かれた名を読む
岩と枯れ木を行き来しては散り
はざまの径に降りつもる声


城と樹と曇
静かなむらさき
四つの路地がすれちがい
再び離れ微笑みあう午後


陰をつくる球体に
行方不明の光は集う
通りは常に あらゆる時間と
歩行者のためにひらかれている


こがねはこがねに
みどりはみどりに変えられて
やがて見るものは居なくなり
こがねをこがねに
みどりをみどりに聴くばかり


冬へ 冬へ
星をかかげる星の手をとり
ざわめきはざわめきを
何も聞こえぬところへ連れてゆく


原を囲む柱が震え
冬の碑の文字を吹いている
境いめに生まれた緋色の子狐
長い影を歩いてゆく



































自由詩 原と影 Copyright 木立 悟 2013-04-19 00:50:23
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