青春
乾 加津也

気がつくと
幻影は去っている
残された静けさが
開放感と
自分であることの証しの取引が済んだことを
物語っている



 不思議なもので
 心の中から自由がきたとき
 彼は門の鍵のことを憶えていないと言った

狂喜のようなものとともに
自らの別の精神から現れ
自らにあるすべてを自律し
そして初めに還ってゆく

選択も、憐れみもなく
わたしもまた知らなければならないのは
青春と呼ばれる
境界線の険しい国の
選民だったという事実か。
(事実はでも
 真実にとどく
 唯一の布石なのでは?)
彼は驚きとともに知り、考え、疑い
否み、憤り、反抗する
止んだときに嘆き、悲しみ、学び
そして門を出た



独りには慣れている
もういちど発つことに疲れのようなものと
ほんのわずかな痛みを感じている


自由詩 青春 Copyright 乾 加津也 2013-04-18 21:23:48
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