【さくらの ゆくえ  その二 桜陰編】 三篇
るるりら

【 桜の散った街を往く 】

立ち止まるしかない 踏切では
たちどころに 遮断機がおりて
多くの人の思いが 通り過ぎる

伝えようとした言葉が
伝えられないときは
立ち止まるしかない 遮断機が降りているのだ

ボケの花が一斉に ほざき
轟音が行く手を はばむ
天然だし と ちいさく つぶやいても 聞こえない

桜が舞い上がる こまおくりの車窓が走る
わたしの世界を
あなたの世界を
風が吹きぬけて
あなたとわたしの世界のすべてを 桜の花びらが舞う

遮断機がやさしく上がり
わたしは あなたに手をさしのべて
わたしたちの心の中に 沈殿してゆく花びらを

一歩つづ 確かめながら 歩く




     【葉桜君は微睡んでます】


      芝生の堤が 目の高さに 続いて
      高低を描き 連続する さくら
      今年も 並木は わらいの波頭
      通り過ぎる顔 すべて ほの明るい


      いとけなく ほどけて 満開に誇る
      花のしたで あのとき きみはいった

      「もっと散るといいのに」



      しゃりんが回転して 音響が少年になる

      しゃせいの少女は 萌える葉を指さした



      自転車は走る 葉桜の路を
      葉桜の好きな 少女に逢うため

      道も石畳もピンクに 萌え出ずる漣

      「もっと 散ると いいのに」


      まちあわせは あの桜の木

      薄く緑に透ける陰








【成長を見守る春】
サクラ サクの電報を心待ちにしてたのだよと言っていたのは お婆さま世代
サイタ サイタとウタウ そのあとに桜がつづくのは 桜世代
サイタ サイタとウタウ そのあとにチューリップがつづくならチューリップ世代             
 

もうすぐ きみは 旅立ちの時
婆さまは 桜の歌を きみに うたっている
母さんは チューリップの歌を うたっている

元気でとか 風邪ひくなよとか 歯みがけよとか
ドリフターズのようなことしか こどもだったころのようにしか
あいらしいとしか いつくしむしか あのちいさかった娘がねぇとか
ありったけの この思いよ
繊毛になれ

さりげなく うつくしい花が かならず もっているもの
さりげなく 咲く花の根のように すがしく白く透明な
繊毛になれ  


たなびく歌よ
サイタ サイタの リフレインよ きみの背中を追え
春の風を切る きみの 繊毛になれ 



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初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に
投稿させていただいたものです。

  http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0

今回は、三つの作品を まとめました、 お題を下さった方々のお名前は
【桜の散った街を往く】kauzakさん
【葉桜君は微睡んでます】aoba_3Kさん
【成長を見守る春】aoba_3Kさんより いただきました。
               


自由詩 【さくらの ゆくえ  その二 桜陰編】 三篇 Copyright るるりら 2013-04-17 07:51:09
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