ししゃも笑う
灰泥軽茶

ししゃもししゃも笑う
ししゃもししゃも笑う

社会に馴染めず
街を追われ山の中の
小さな穴蔵に住む者たちは
カラスたちに目をくりぬかれ
身体はだんだん干からびていく

生きているのか死んでいるかもさえもわからず
暗闇の涼しい所で時を過ごす
幾年か過ぎその身体はだんだん小さくなって
魚の干物のような形になっていき
たくさんの根を伸ばしていく

そして春になれば
山菜と一緒に山肌から
干物の顔が笑ったような
香りが高い芽がつんつん生えてくるのだ
村の者たちは誰にも知られず
それをこっそり採ってきて
乳鉢でしっかりと粉状に砕き
街に下ればたいそう高値で珍重される
民間医療の薬として売っていく

それを一口飲めば

ししゃもししゃも笑う
ししゃもししゃも笑う

どこからか念仏が聴こえ
傷みが消えていくそうな




自由詩 ししゃも笑う Copyright 灰泥軽茶 2013-04-12 22:43:00
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