ししゃも笑う
灰泥軽茶
ししゃもししゃも笑う
ししゃもししゃも笑う
社会に馴染めず
街を追われ山の中の
小さな穴蔵に住む者たちは
カラスたちに目をくりぬかれ
身体はだんだん干からびていく
生きているのか死んでいるかもさえもわからず
暗闇の涼しい所で時を過ごす
幾年か過ぎその身体はだんだん小さくなって
魚の干物のような形になっていき
たくさんの根を伸ばしていく
そして春になれば
山菜と一緒に山肌から
干物の顔が笑ったような
香りが高い芽がつんつん生えてくるのだ
村の者たちは誰にも知られず
それをこっそり採ってきて
乳鉢でしっかりと粉状に砕き
街に下ればたいそう高値で珍重される
民間医療の薬として売っていく
それを一口飲めば
ししゃもししゃも笑う
ししゃもししゃも笑う
どこからか念仏が聴こえ
傷みが消えていくそうな