緑の桜
黒ヱ
最高の飛翔の 舞うが如く離れて
息つく間に 触れ合う大地に横たわる
その玉響は あまりにも短かくて
「下がこんなにも近いとは」
美しさをくれた そんな悲しいはずの別れを
わたしたちは度々 慈しまない様に
当り前に 繰り返される瞬きを
常に愛し 大切に思う心
木々が 咲き誇る花達を疎ましく思わないように
募る想いの風上に居るのに
逡巡の気持ちは 微塵もない
また それもお互い様であるのに
風下に立つのは億劫で
そんなところも 同じ花
「あなたが見る わたしは気がつかない」
何が当り前で 何がそうでは無いのか
いつの間にやら靄が被さる 曖昧な境界線が見えなくなった頃
「そうして わたしは気がつく」
また その美しい閏に
ほら ごらん
図らずしも いつでも対岸は成り
舟に弧を渡す
わたしたち
いつからこんなふうに 静かに
同じ景色を見つめるようになっただろう
季節を含む風は また攫う
「何度も 何度でも 同じ時を過ごす」
次に吹く 連れてくる色は
また ほんの少しだけ変わっているのだろう
緑に染まる木々
それがとても美しいと思えた
とても素晴らしいと思えた
それは 一人ではないということ