ひとりぼっちのふたりごっこ
中村 くらげ
ひとりになった四角い部屋で
ぽとりと零す細い声
捲り捲れてゆっくりと
唇から剥がれ落ちた
ワンルームの床の上には
足の踏み場もないほどに
彼女の名前が散らかっている
ひとりになった四角い部屋で
返事をしない高い声
知らず知らずにこっそりと
戻ってきた手紙のよう
今日の笑えた出来事を
話したくて呼びかけるけど
ひとりごとになり積み重なった
いくら散らかろうと
いくら積み重なろうと
ふたりになれないひとりがいる
明日になれば四角い部屋を
飛び跳ね回る笑い声
ひとつ残らずさっぱりと
聳える山を吹き飛ばせ
彼女がドアを開けるまで
寂しい夜を乗り越える
ひとりぼっちのふたりごっこ