落命
三田九郎

雨音に目を閉じる

雨粒を受けて揺れる枝先
こぼれ落ちる花弁
夜の闇
面識のない知人の母の死を思う

嵐の来る日の前の晩
帰路
桜並木との交差点で
信号に照らされる君を見つけた

君を照らすためではない灯りに照らし出される君は
明滅する信号を 通りを
行き交うものたちを 闇を
普段着で包み込む

用意されていたわけではないものに
美しさを告げられた夜

雨音に目を閉じる

君は散っただろうか
命は去っただろうか
知人の母は死んだばかりだ
ぼくらはまだ途上にいる


自由詩 落命 Copyright 三田九郎 2013-04-07 08:52:30
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