同じ事をなかなか二度とうまく出来ない
ヨルノテガム
傘が二つ並ぶ
遠く電車の走っていく
鐘の鳴るように何度も息を吐く
夜を追跡する まぶたを閉じる
ライオンが花の匂いを嗅ぐ食べる
美術館で尾形光琳の下絵に出合う
革靴を雨濡らして硬く縮む
薄暗い夕方に 薄暗い朝方を探す
薄暗い朝方に 薄暗い夕方の。パラレルワールド。
テレビから声がする
*
『願いが遂げられなければ死んだも同然だっ!』
と息巻いてみたものの 願いをよくよく調べ
探してみると「口笛を吹く」くらいだった
*
傘をさす
遠く青い電車の走ってくる
鐘の鳴る昔の街の小学校の。
夜を渡り歩く、暗闇に浮かぶ足跡
ライオンが花の匂いを嗅ぐ眠る
映画のシーンが夜空にリピート繰り返し
何度も思い描く、原点を求め戻る
絵描き教室の子どもが
夜トイレに行くのが怖い、お化け怖くない?
と真剣に告白してくる
言わなかったけど、実は先生 お化けみたいなもん
なんだよ、とクスクス思う。
*
少女たちは かくれんぼ する
匂い立つ花のように わらう
少女はひとりで くるくるまわって かくれんぼ する
もうひとりの少女は
相手もいないのに 飛び出て笑いかける
どちらかが いなくても
ふたりとも いたとしても いなくても
手をふれて つないだ人間たちを 記憶する