冬の爪痕
乱太郎

 
今夜もまた誰かの悲しみが裂けてしまった
梟の眼が光る孤独の森
冬の尖った爪が人の夢を引っ掻く

日が昇れば
何も聞こえなかったように
白い雪の舞い
光が冬の仮面となり舞踏会

樹氷から垂れた一滴が
棒となって憐れみを乞うのだろうか
六角形の結晶は
密かに剣を忍ばせ
方向を見失った盲人たちを狙う

しかし
時は凍りつくことはなく
冬の去りし後


悲しみは溶けていくどころか
またひとつ年輪を刻んでいって冬を待つ


自由詩 冬の爪痕 Copyright 乱太郎 2013-04-03 13:55:53
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