ぐるぐる労働

小さな恐竜が噛みつきそうな顔で
こっちをじっと見ている。
つぶしてみろ、ガオー。
大きくはないけれど
小さくはないのは価値があるから。
その恐竜を倒せばお金がもらえる。
コツコツと1匹づつ
倒しても
倒しても倒しても
目の前を立ちはだかるその爪は
結構鋭くダメージもある。

ぐるぐる目眩がする。
倒すべきものがあることは
守るべきものもあることでもあり、
大きくはない恐竜だから、
英雄ほど報酬はもらえず、
賞賛もないし、
小さな恐竜しか倒せない錆びた剣では、
最新兵器を買う余裕はないけど、
家族に土産くらいは買って帰れる。

恐竜よ、おまえにも命がある。
それがおまえの価値だろう。
小さくともこちらをにらみつける矜持は
世の中に何かを与える命だからだ。
労働はそうして、
倒された恐竜の大きさだけ
あるいは数だけ、あるいは存在だけ
あるいは認識だけ、あるいは分子だけ、
あるいは意識だけ、あるいは心だけ、
還元され、
分散し、
めぐる、めぐる、めぐるのだ。

さて
今日も対峙するか。

錆びた剣を振り上げながら、
考えてはみる。
お風呂で洗える血しぶきを浴びて、
働きながら考えてみる。


自由詩 ぐるぐる労働 Copyright  2013-04-03 13:42:09
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