文車妖妃
佐々宝砂

妬ましきをみなの名を
記しては破り、
願へども叶はぬ懸想を
綴りては破り、

執心こめたる玉章たまずさ
文車ふぐるまに納めしをみなは
西方さいほうへ去りて久し。
されど消えやらぬはことのは、

あやしきかたちを成し
我が枕に語りき。
我ふぐるまにのみ住むにあらず、
紙無くとも文在るところ必ず我在り、

ゆめならずとおぼへよ、
今汝が前に在るは妖妃ようび也。




(未完詩集『続・百鬼詩集』収録予定の「女妖たち」より)


自由詩 文車妖妃 Copyright 佐々宝砂 2004-12-27 03:45:02
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