軽トラ生い茂る
灰泥軽茶

軽トラが農地の空地に
放置されて顔だけになっている
車輪は地中に埋まって
後ろの荷台は錆びてもげて
かろうじて面影を残すのみ
緑の雑草や蔦が生い茂り
うす紫色の花がたくさん綺麗に咲いている

運転席を覗いてみると
今の軽トラよりうんと小さくて
小さなお爺さんがたばこをくゆらして
ラジオを流しており
小さなお婆さんがちょこんと湯のみで
お茶をすすっている

周りを見渡せば
似たような軽トラがとまって
近くで作業をしていたり
山あいの小さな農道を
あちらこちらへと走っている

あと何十年かしたら
この埋もれた軽トラも
自分の役目は終わったことに気づくだろうか
そのうち何か違う役目を
おうことになり居続けるかもしれない
ヘッドライトは仄かに光り
私はその場所をあとにする







自由詩 軽トラ生い茂る Copyright 灰泥軽茶 2013-03-31 16:44:01
notebook Home 戻る