風見鶏
nonya


 風を眺め
風と語り
 風を伝える

もうすぐ名前がなくなる村の
公民館の屋根のてっぺんで

 風を聴き
風と歌い
 風を奏でる

僕は少し錆びついた時間を
飽きもせずについばんでいる

 風を嫌い
風と別れ
 風を忘れる

名札だらけの街に恋焦がれた
子供達は元気でやっているのか

 風を欺き
風と争い
 風を抑える

ヒトとモノの濁流に飲まれて
風も読めない大人になってはいないか

 風を感じ
風と歩き
 風を見守る

もし何かを見失ってしまったら
僕を想い出してくれてもいいよ

 風を嗅ぎ
風と笑い
 風を手招く

さざめく緑の稲田とフェーンの風
盛り上がる用水路と焼けた素肌

 風を着て
風と走り
 風を頬張る

僕は風を選べないけれど
君は風を選べるはずだから

 風を掴み
風と競い
 風を目指す

たまには羽ばたこうとしてみようよ
たとえ翼を持っていなくても





自由詩 風見鶏 Copyright nonya 2013-03-30 11:05:08
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