サクラブルー
佐野権太

動き出した車窓が
景色をゆっくり手放すように
やさしくほどかれる季節は
まだ寝ぼけていたい春の子が
ようやく
んー と
背伸びをしたみたい

かしこい子も
そうでもない子も
とにかく
たくさんの仲間がいて
胸がおどったね
がっかりしたことも
多かったけれど

席替えは
窓際が好きだった
気になる子の隣りより
ふたつくらい離れた席で
風に吹かれて眺めているほうが
よかった

さくら さくら
ほとんどが
溶けて消えてしまうこと
分かっているよ

それでも
こんなにもたくさん
ちりぢりになって
紛れてしまうのは
もったいないよ

さくら さくら
どこからきたの
闘いの終わったあと
僕たちはどこへむかえばいい

いくつかの雲を
やり過ごしたあとの
空はブルー
いつだって
スタティックブルー





自由詩 サクラブルー Copyright 佐野権太 2013-03-28 09:31:31
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