おてがみ
ドクダミ五十号

 
  拝啓

 許して下さい





 米が底を突いた

 馬鈴薯の

 芽が出始めたのが一つ

 箱にぽつんとあって

 一緒だったにんじんや

 親しかった玉ねぎを

 寂しく思い出している

 そんな感じがしたよ

 ほんわかとしていたもの

 こんな風にさ







 不憫だから食べてやるとは

 言えないよ

 言わないけれど けれど

 芽なんか出しちゃって

 少しシワもよったりして


 皮を剥いて

 蒸して 潰して

 強力粉と 塩を加え

 こねて 切って 丸めて

 フォークの背で つぶす


 茹でてザルに上げるまで

 なんだか切なかったよ


 今では西洋スイトンに成り果て

 愛らしかったころころりんは

 ソースの海で泳いでいる

 ロールキャベツや付け合せと一緒に

 君の肖像は画鋲で貼っておいたよ

 忘れない様にね

 
 舌触りはつるりと 噛めばもちもちと

 官能的なのは 私に対する最後の抗議かな

 きちんと食べましたは 言い訳だよね

 

 馬鈴薯君へ  私より
 


自由詩 おてがみ Copyright ドクダミ五十号 2013-03-27 10:29:06
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