少年人形
salco

その兵隊は綺麗な目をしている
義眼さながら澄んだ一対
まばたきも忘れたかのように
永続の晴天を映しながら
それは自分をしか見ない
時々彼は女の役目もする
そんな時さえ目を閉じない

本物は多分
どこかの冷たい湖底に在る
決して明けたことのない
夜の水底に在って
生誕時より三、四十年の歳月をかけ
ひそかに腐って分解して行く
何も見ず、何にも動じず
着々と腐って行く


ようやく彼は目を瞑る
美しい人為の水晶体を
今日の光が射ようとした時
険しく立てた眉間の溝奥で
やはり黄金の夢は
やはり黄金の過去へと繋がっている
それは生誕以前の暗黒
巨大な無知の深淵
独り勝手の無心な経験へと

痛みも知らず疲れもしない
柔和な涙の内に在り
病みも弱りもしない目
その虹彩は環礁の色に縁取られ
一切の視力を持たず
従って光景に惑い濁ることもない
神経に煩わされることのない眼球
異物の不可侵に触れている先端から
やがて神経それこそが腐り出す


自由詩 少年人形 Copyright salco 2013-03-25 23:22:45
notebook Home 戻る