ドクダミ五十号

薄くて丈夫で見えない

包まれていると

わかったのは八つのわたし

どこにいても直接には触れられない

世界という外側があって

他所ゝしく 温度も無く

絵空事なのが当然だった


今でもそれに包まれて

慣れてしまっているから

君が例へばそばにいても

隔たり以上の遠さなんだよ


唯一まなこは君を捉えるのだけれど

悲しいことに触覚は当然に無いので

エスキースの為の石膏の肌なんだよ


胎児がずっと 羊膜に包まれてはいられない様に

私は破水の後の 呼吸の為の泣き声を泣かなければ

窒息してしまいますでしょうね


膜が破れを拒むのか 破りを私が戸惑っているのか

どちらかか 両方か 柔軟で強固な膜は

未だに私を包んでいる 

春の御空を割る様に枝が伸びて 花を咲かせていても


慣れの恐ろしさに慣れてしまうには 四十三年は充分なのだろう


自由詩Copyright ドクダミ五十号 2013-03-23 09:41:59
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