雲と柔らかいほっぺ
よしたか




まず雲を書いたのは
雲は想像力の手にしっくりくる粘土だからね
それから雲は
どんな形をして
どんな空を流れて
やがて見えなくなり
いちご水のような雲海から
また素晴らしさをすくいとれるのか

僕は芝居がかった心臓を一度とめ
小さな傷をジェット機にする
何色でもかまわない空へ飛んでいく

分厚い囲いで咲き誇る徒花は
魅惑的な変化に傷つく心が固定した空の下
その下で育った動きまわる窓さ
太陽光を押しとどめるビニールハウスのうねり
弾き返される光のトンボたち
8つの足を抱えてる涙のタランチュラ

僕は君の迷いのない情熱に驚いていたんだ
ちょっと芝居がかった性別だなと思いもしたんだけど
愛情を行き渡らせる心の動きとでもいうのかね
それが一回死んでしまった人のように迷いなく暖かった

どこまでも伸びる指が
構造と色彩を増す雲をかたどって
その横を現象の雲がたおやかに流れていく
君の車はヒットしたラブソングばかりが流れる
君が楽しそうに歌う間は嫌いじゃないんだ

好きなんだ君の柔らかいほっぺ

陽射しがバレリーナのように跳ね回り
善良な風が賑わうどこにでもある公園で
子どもの自分が砂の城をつくっている
そういった体験はないけども鮮やかに思い出せる
崩れることさえプランにいれて夢中でつくってる
泥の顔を泥の手が洗ったね


僕が見上げた空には
その公園が雲になって浮かんでいる
そんな僕と
そんな空の様子が
誰かの見上げた空に浮かんでいる

しばらく うつぶせてから
ひっくり返って見上げた空
雲間のむこう イチゴ水の瞳が電気の体を見ている

雲が流れたその後を
手書きの雲たちが追いかけた
大地を埋め尽くすツクシンボウの合唱
そのハーモニーに揺れながら
皿洗いをするのは嫌いじゃないさ

好きなんだ君の柔らかいほっぺ





自由詩 雲と柔らかいほっぺ Copyright よしたか 2013-03-21 18:36:16
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