山中
灰泥軽茶

目を開けても閉じても闇の中
空の高い所で星が輝いている
百均のペンライトを再び点灯し
川沿いを降りていく

もういくつめの滝だろうか
雪解け水が勢いよく流れ落ちていく
擦り傷だらけの身体で
山の斜面を上がり木の幹や根づたいに
滝を横切りまた川沿いに降りていく

しかしあと1メートルほどで足場がない
何も考えられずに時間を過ごし
仕方なくザックにできるだけの
衣服を詰め込み放り投げ
私は川に飛び込みすぐ着替える

もういくつめの滝だろうか
今回の滝が一番大きい
轟音が鳴り響く
吸い込まれそうな誘惑に怯え
ここで野宿すべきか
大きな石の上で力尽き
ぼうっとしていると
自然に力が湧いてくる

山の斜面を登りやみくもに歩いていくと
ぽつんと山小屋が現れる
人の気配はしないが
自分の現在地が判り歓喜する

しかしここからまだ町に降りなきゃ行けない
力尽きぼうっとしていると
また自然に力が湧いてきて
ゆっくりと歩きはじめ
山道から舗装されたアスファルトに降りたつ

私は夜空の星を眺めながら町の明かりを眺めながら
ただただ感謝し帰途に着く










自由詩 山中 Copyright 灰泥軽茶 2013-03-20 15:14:43
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