片目をつむると殻が置いてあったので
ひょいと拾い上げてみると
それはカタツムリの抜け殻で
蝉や貝の抜け殻ではなかった
延々と続く空洞の底は見えない
殻を持ち上げても
あらゆる光に振りかざしても
星の一つや二つふってこないなんて
この宇宙は駄目な宇宙だと
僕は殻に向かって激怒したのだ
☆
曇りガラスの上を一筋の液が垂れていく
指でこするとそれは粘着質の物質であることが分かる
慌ててガラスでこすりとる
キュキュッ
雨ガラスになる
外はすきすさぶ風に右往左往する雨粒でうるさかった
粘着質の液は水分を吸収して生き物になった
それはナメクジだった
泪をたらして殺そうとしたら
窓枠に転がっていた宇宙に滑り込んでカタツムリになったので
僕は殻を右足で潰してやったんだけれど
そしたら殻の中の宇宙が崩壊して辺り一面ブラックホールの渦に吸い込まれて
気付いた時にはベットの中でハアハアいっていた
★
今朝の天気は晴れで
(どうやら昨日の晩は雨がふったようだけれども)
窓には地面から飛び散った泥がついていて
(それはそれはとても美しい斑模様でございました)
窓枠には殻が転がっていて
殻の中から黒い筋が漏れ出していて
筋は地面へ一直線に落ちていて
その後を指で追うと一つの穴があって
どうやらこの黒い筋はアリのようで
この黒い穴もアリの巣みたいだった
穴の中をのぞくとそこは宇宙で
指で穴の中を引っ掻き回してやったら
解体されたカタツムリの破片が瞬き始めて
一つの銀河を形成し始めるのだった
メビウスリング
プロ詩アンソロジー詩集掲載作品
http://mb2.jp/_aria/828.html
※3/20、つまり明日までアンソロジー開催しておりますので、興味のある方はぜひ即興でもいいので参加してくださると嬉しいです!