真夜中に鳴く鶏
よしたか



花が一気に咲いて
それが一気に枯れるのはもう嫌だね

真夜中に鳴く鶏がいてもいいじゃない
朝!?と暗闇に目覚めてもいいじゃないか
いつか自分でもわからずにセットした目覚まし時計が
突然壁の中で鳴り響いて腐りきったベッドから抜け出してもいいじゃないか
陸を生き抜いた魚がいてもいいじゃない
話しをきかないヒーローをやっつけるモンスターがいてもいい
どこにいるかわからない自分から一生逃げられなくてもいい

汗によく似た涙がとめどなく溢れて
理由もなにもめちゃくちゃに
ただ数十分の瞬間が
不幸をつくる幸せもかえりみず
不敵に輝いていった
感情がぜんぶ集まってよくなる
そんな素敵なことが気のせいみたいに泡の記憶
そんな野暮なジェットコースターの性格が
生きていくため
生きていくためと
卑小な怒声みたいに
眠りを拒んだ僕の体を突き抜けて
あの素晴らしい感情の爆発が
もういつかの褪せた結晶になって
胸の空洞を冷ややかにカランと転がって
だから
だから
真夜中に鳴く鶏がいるかも!?

捨て猫が尻尾をピンと伸ばして
新築と廃屋の隙間へ生意気な足取りで消えていく
シンシンシン
上手に冬の風に乗った紙飛行機が
空飛ぶ氷柱のようにエレガントだね
ヒューヒュヒュー
通り過ぎる車を数えるのをやめた人が
あなたを午後のブラックコーヒーに誘う
プーカカカカカ
だから
真夜中に鳴く鶏がいてもいいぜ

あなたがあなたを嫌いなだけ
あなたが嫌う心を愛す眼差しに口を尖らせ
あなたが特別なやり方で愛したいあなたを
あなたが僕の部屋に連れてきて
僕ら誰が誰だかわからないくらい見つめあい
やがてはじめてじゃない最初の気持ちを別々の手に見つけるから
そいつを握りあって
真夜中に鳴く鶏がいていい
それから
それから
朝に鶏が鳴いた

切なくて
苦しくて
清らかで
暴力だった
その
百年の自由は




自由詩 真夜中に鳴く鶏 Copyright よしたか 2013-03-18 19:46:44
notebook Home 戻る