魚が飛ぶ日は決まっている
ざらざらざら子
動物園戦争がはじまったそうだ。くまとゾウが戦ってくまはみんな駄目になったそうで、どうしてくまとゾウが戦ってるのかは奴らにしかわからない、誰も知らない、奴等だってほんとうのことはよくわかっていないらしくて。それと、くまがみんな駄目になったって、くまが全滅したってことかな?
動物園のそばをとおる度に、生きているものたち、生きていたものたちの焼ける、気だるい臭いが漂っている。
だけどあたしは相変わらず、コンビニでアイスクリームを買って、舌の先っぽで冷たいと甘いを感じて、日常に上手いこと溶け込んでる。
そうしている間にフラミンゴと麒麟が戦ってフラミンゴの右足がぜんぶ駄目になったって、フラミンゴと麒麟て仲悪かったんだ、知らなかったな。奴等は上手いこと溶け込めなかったんだろうか、冷たいと甘いのあいだに、
ゆっくり確実にずれていくあたしのすべてに
アルコールを捧げてほしい
夕景を背にして魚が飛んでいる、あれは日本から逃げ出す動物たちを乗せた飛行機だ。
動物園の周辺は、臭くてたまったもんじゃない、そう言って人々は動物園の閉園を求めて動き回る。ここでわたしたちはアルコールを体内にぶちこんで、冷たいと甘いのあいだに「許す」をねじ込むべきだったんだけど、そう、気がつくのはいつも、すべて終わったときね、お母さん。あたしはあんたから生まれてきたってこと、おぼえてる?あたしは忘れそうだから、メモして本のあいだにはさんでいるよ。
「動物園戦争、そして、魚が空を飛ぶ、
/母さんから生まれたあたしは忘れっぽい」