ゴールドスタイン
よしたか



春は皆のラブホテルだから
友の言葉尻をひっぱたこう
いい匂いがする人を敬おう
知らない家の玄関のように
僕を知らないハートマークにしないでほしい
行白のむこうで胸に響く言葉が待ち伏せして
感謝を表現したくない氷柱の難しさが
洗い立てのシーツに倒れこむ

シュガーもミルクも黄金色に溶けこんで
苛立ちはきれいに花瓶に収まった
春は生命が燃えあがると囁かれ
鏡についた鼻の油が変身を嫌っている
氷がカランと鳴ったコップから
編みこまれた情緒が正気を吸い上げたぞ

唇の空想でむせかえった他愛ない一時
春は無言の愛撫を庭に届けた
押し返す奇想天外な赤子たち
花冠をかぶって思案したがやはりまだ冬だ

言葉尻はパンみたいに焼き上がり
恨めしそうな憧れの香りがする
体中を鼻の穴にして
めいっぱい嗅いでやろう
太陽の作文を大地が読みこみ
花々は不思議な微熱で浮かれている

わけもわからずうんざりして昏睡した
夢見心地の陽射しが忍び寄り
草冠の僕は冬をゆっくりなくしていく



自由詩 ゴールドスタイン Copyright よしたか 2013-03-17 03:03:44
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